川村 喜一 展 - INVISIBLE / INDIVISIBLE -
Kiichi KAWAMURA solo exhibition "INVISIBLE / INDIVISIBLE"
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■会期 / Date
2015年7月25日(土)-8月8日(土)
Jul.25 (Sat) - Aug.8 (Sat) 2015
★オープニングパーティー / Opening Party
2015年7月25日(土) 18:00-20:00
Jul.25 (Sat) 2015, 18:00-20:00
■時間 / Open
11:00-19:00
■休廊 / Closed
日月休廊
Closed on Sun and Mon
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写真や映像技術は、より可視化するための精度が上がり続け、全て見えてしまう現代においては、見えないことの方がむしろ貴重なのかもしれな い。謎は謎であり、闇は闇である。光の中にあっても、不可視-つまり未知に対して、我々には内から呼び起こされるような感覚や能力があるのだ から。
■ INVISIBLE / INDIVISIBLE(不可視の / 不可分の)について
私にとって写真・映像表現は、きっと見えないものを見えるようにするための道具ではな いのだろうと思う。
「見えないものを見えないままにする」こと。そして、そこに目を開き続けること。
これが今日いかに困難で、かけがえのない経験であるかと私は考える。
例えば私たちは、昨夜注文した宅配便が、明日の午前中に届くことを知っている。
次の電車が何時に来て、いつ目的地に着くかを知っている。
太陽が沈んでも、私たちの歩く夜道は、どこまでも続く街灯に照らしだされている。
あらゆるものは可視化され、あらゆる時間は計測可能であるかのように思われる。
しかしその外へ進んで足を踏み外すとき、未知への畏怖と共に、忘れていた時間感覚が呼び覚まされるように私は思う。
それは、夜の海の底に釣り糸を垂らすような感覚だ。巨大な湾岸道路の下、真っ暗な埋め立て地の岸辺、長い防波堤の先に降り立っ て水際に近づく。
おそるおそる釣り糸を垂らし、光の届かない海の底に視線を投げ続ける。そこはどこかもう人間の領分ではない。魚は姿を見せない まま、あてどもない時間を過ごす。
けれども、そこには大きな時間の塊のようなものがある。潮が着実に満ちていくこと、遠くで聞こえる白波が確かにこの足元まで届 くということ、月が驚くほどの速さで移り行くこと。時が不断に連続していることを、私は自らの内に感じる。
不可測の時に身を浸し、不可視の闇を見つめる先に、意識の不可分な持続性があるように思う。それは畏敬にも似た、プリミティブ な時間との再会である。
そしてこの闇はきっと、私たちが目をそらさない限り、この身のすぐそばにも潜んでいるだろう。
私にとって写真・映像表現は、そのような不可視の領域を見つめるためにある。
■ 本展の作品について
作品「INVISIBLE / INDIVISIBLE」はパニック映 画の典型的なワンシーンから着想を得ている。
宇宙人や怪物や自然災害など、強大な畏怖の存在が画面の中心に姿を現し、背を向けた群衆がその一点を見つめているという光景 だ。
「INVISIBLE / INDIVISIBLE」ではしかし、中心 にあるべき畏怖の存在が写されていない。また、背を向けた群衆の顔も見ることができない。
名前も顔もわからない群衆のまなざしが、何もない空にむかって一点に投げ出されている。一見、見るべきものが何も写されていない空虚な写真に 思える。しかし私はその空白こそが、人々のまなざしと意識を結びつける磁場であると考えている。
そしてその空白を埋めるのは、観る者の想像力だ。パニック映画の怪物は、決して空想の産物ではない。戦争や災害の傷跡、その記 憶から産まれ落ちたように、私たちを釘付けにする畏怖とは、自らの記憶、あるいは予感のなかで静かに影を落とすものだと考えている。
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川村喜一 Kiichi Kawamura
1990
東京生まれ
2015
東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻 修了
現在、同専攻博士後期課程 在籍